新卒内定者の取扱い

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2014年12月03日


新卒内定者の取扱い

●新卒者の内定の法的性質
労働契約は当事者の合意によって成立しますが、新規大卒者の場合、いつ労働契約が成立するのでしょうか。一般的には学生側からの応募・入社試験への受験・面接が申し込みの意思表示、企業側の内定通知が承諾の意思表示とされています。
 したがって内定時に労働契約が成立し、学生はその企業の従業員たる地位を取得します。使用者の採用の自由(使用者が労働契約を結ぶか結ばないかの自由)は内定時までです。内定に先立って内々定の通知が出されますが、内々定の段階では労働契約は成立していないと考えられています。

●内定中の法的性質と内定取り消しの正当性
 内定によって労働契約が成立していても、内定者は学生であり労働義務がありませんから通常の労働契約と同じではありません。内定中の労働契約は内定時に予測できなかった事態が発生したときに、使用者が内定を取り消す解約権が留保されていて、就労を始める始期が定められた「解約権留保付就労始期付労働契約」とされています。この「解約権留保付就労始期付労働契約」の成立は、学生が他社との就労の機会を放棄しているかどうかによって判断されます。
この労働契約が成立しているとされた場合、内定中は「解約権留保付」・「就労始期付」とはいえ、労働契約が成立していますから使用者による内定取り消しは解雇と考えられ、解雇権濫用の法理の適用を受けます。つまり、「客観的にみて合理性の認められる社会通念上相当な事由」がなければ内定取り消しは無効とされるのです。例えば、卒業できなかったことは内定取り消しの相当な事由ですが、「内定中にレポートを提出してこなかった」ことなどは内定取り消しの相当な事由なりません。この場合、従業員としての地位が認められるほか、不法行為による損害賠償請求も認められることになります。内定取り消しがありうると考えられる場合は、内定通知書に内定取り消し事由を記載しておく必要がありますが、実務的には金銭的な解決をとることになります。
 逆に学生からの内定辞退は、民法627条の解約の自由があるので、少なくとも2週間の予告期間をおく限り自由にできることになります。

●内定者の研修
内定中の研修命令について、学生は研修に応じる義務はなく、研修をさせる場合は労働者の合意が必要となりますが、研修の内容によっては、使用者の指揮命令下にあると認められ、賃金の支払い義務等が発生する場合があります。特に、本来入社後に行うべき従業員研修を前倒しして入社前に行うような場合は、使用者による黙示の指示が推認され実質的な労働であると考えられる可能性が高くなります。
 また入社前研修の場合の労災適用の可否ですが、労働と認められれば労災保険は適用されますが、研修の場合は、民間の傷害保険に加入し、リスクを担保することになります。


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